梅の剪定時期や方法、注意したいポイントを学んで梅の花も実も楽しもう!
梅は日本の庭園や家の庭木にも人気のある樹木です。春に咲く花の美しさや、夏・秋に収穫できる梅の実は、季節感や暮らしの楽しみを豊かにしてくれます。しかし、花や実を存分に楽しむためには「剪定(せんてい)」が欠かせません。剪定は樹形を整えるだけでなく、花芽や実を付けやすくしたり、病気を防ぐ効果もある重要かつ欠かせない作業です。
この記事では、梅の剪定時期、剪定方法、その注意点、剪定すべき理由について詳しく解説していきます。実際に剪定作業には縁がない方も、梅を楽しむ一人として知っておくとより一層、梅の花・実を愛おしく感じられますよ。

Contents
梅の剪定に適した時期は?
梅の剪定時期は、木の目的や樹齢によって変わります。花を楽しむ「花梅」と実を収穫する「実梅」では剪定の仕方も異なりますので、まずはタイプごとの特徴を理解することが大切です。
花を楽しむ花梅と実を収穫する実梅
梅には大きく分けて二つのタイプがあります。ひとつは花の美しさを楽しむ「花梅」、もうひとつは実を収穫する「実梅」です。花梅は枝の形や花の付き方を重視するため、剪定によって樹形を美しく整えることが目的です。一方、実梅は果実の量や品質を重視するため、実を付ける枝を選んで剪定することが重要になります。
剪定の目的が違えば、剪定する枝の選び方や時期も異なるため、どちらを育てているかを明確にしてから作業に取り掛かりましょう。
花梅(はなうめ)の剪定時期:春・夏・冬
花梅は花を楽しむことが主な目的なので、花芽を残すことが重要なポイントです。そのため、剪定の時期は春(花後)、夏、冬の三つが基本となります。
- 春(花が終わった直後)
花が終わった直後に行う「花後剪定」は、咲き終わった花や不要な枝を整理し、次の花芽の形成を促すために行います。特に枝が混み合っている場合や、古く弱った枝を剪除することで、翌年も花付きが良くなります。 - 夏(梅の実が小さくなる時期)
花梅でも実がなる場合がありますが、花がメインであれば実はあまり重視しません。夏の剪定では、伸び過ぎた枝や込み入った枝を整理し、風通しを良くすることが目的です。また、樹勢を強く保つために徒長枝(まっすぐ上に伸びる枝)を切り戻すことも重要です。 - 冬(落葉期)
葉が落ちて樹形が見えやすくなる冬は、樹形を整えるのに最適な時期です。古枝や弱った枝、樹形を乱す枝を剪除し、翌春の花芽を確保します。冬剪定は休眠期剪定とも呼ばれ、木に負担をかけずに形を整えられる時期です。
実梅(みうめ)の剪定時期:1〜3年目、4年目、4年目以降
実梅は果実の収穫を目的とするため、樹齢に応じた剪定が重要です。木の生長段階ごとに適した剪定内容があります。
- 1〜3年目(若木期)
この時期は樹形を整えることが主な目的です。苗木の主幹を中心に枝を整理し、適切な分枝を促します。高さを抑え、低めで収穫しやすい樹形に整えるのがポイントです。剪定は強く切りすぎず、枝全体の1/3程度を目安にします。 - 4年目頃(実が付き始める時期)
実梅はこの時期から果実をつけ始めます。実の付きやすい枝を残し、混み合った枝や不要な枝を剪除します。剪定により日当たりや風通しを改善することで、果実の質も向上します。 - 4年目以降(成木期)
本格的な収穫期に入ります。毎年剪定を行い、実付きの良い枝を残して樹形を維持します。冬と夏の2回を目安に剪定すると、樹勢を保ちながら果実を効率的に収穫できます。
梅の剪定方法は?
剪定方法も花梅と実梅で異なります。加えて、枝が垂れ下がる「しだれ梅」には特有の剪定方法があります。
花梅の剪定方法
花梅は枝ぶりを美しく整え、花芽を残すことが目的です。剪定の基本は「樹形を整える」「花芽を残す」こと。要点は以下です。
- 不要な枝や古い枝は根元近くから切る
- 枝の交差や混み合いを整理して、日当たりと風通しを良くする
- 花芽を誤って切らないよう注意!花芽は丸みがあり、葉芽よりふくらんでいることが多いのでよく観察する
しだれ梅の剪定方法
しだれ梅は枝が下垂し、庭園や庭先で優雅な雰囲気を演出します。しかし、枝が垂れ過ぎると地面や他の植物に触れ、樹勢が衰える原因になります。剪定方法は以下の通りです。
- 花後(3〜4月)
伸び過ぎた枝や地面に近すぎる枝を切ります。外芽で切ることで枝の向きを外側に誘導します。 - 夏または冬
垂直に伸びる枝や込み入った枝を整理し、全体のシルエットを整えます。 - 切り口の処理
剪定後は癒合剤を塗って病害虫の侵入を防ぐことをおすすめします。
実梅の剪定方法
実梅は果実を収穫するために、果実のつきやすい枝を残すことが大切です。
- 若木期(1〜3年)
主幹の切り戻しで分枝を促し、樹高を低く保ちます。枝全体の1/3程度を切るのが目安です。 - 成木期(4年目以降)
混み合った枝を整理し、日当たりと風通しを改善します。古枝や細い枝を剪除し、実付きの良い枝を残します。 - 切り戻し
長く伸びた枝は適度に切り戻し、樹形を整えます。剪定量は全体の1/3程度に留めると樹勢を保ちやすくなります。

梅の剪定、注意したいポイントは?
梅の剪定を行う際には、いくつか注意すべきポイントがあります。これらを守らないと、花や実の付きが悪くなるだけでなく、樹木自体の健康にも影響が出ることがあります。剪定は単なる形を整える作業ではなく、木の将来の花付きや収穫量、さらには病害虫予防にも直結する重要な作業です。ここでは、特に意識しておきたいポイントを詳しく解説します。
花芽・葉芽を区別して剪定する
梅の枝には「花芽」と「葉芽」があり、この区別を間違えると翌年の花付きに大きく影響します。花芽を誤って切ってしまうと、せっかくの花が咲かず、梅の景観や収穫量が大幅に減ってしまうことがあります。
花芽は枝の先端よりも少しふくらんだ丸い形をしており、葉芽は細長く尖っています。剪定を始める前には、必ず枝をよく観察し、花芽と葉芽を見分けておくことが大切です。特に枝の込み入った部分や細かい枝では見分けが難しいことがあるため、光の当たり方を変えて確認するか、拡大鏡を使うと安心です。また、花芽を残すだけでなく、古くなった枝や交差している枝も整理することで、翌年の花や実の付きが良くなります。剪定は「花芽を守りつつ、木全体の形と風通しを整える」というバランスが重要です。
剪定の時期や量を守る
剪定のタイミングや量も、梅の健康と花付きに直結します。例えば花梅は夏に強く剪定すると、翌年の花芽分化が阻害されることがあります。逆に冬の休眠期に行う剪定は、樹木への負担が少なく、花芽や枝の調整がしやすい時期です。剪定量が多すぎると、樹勢が弱まり、枝の再生が遅れることがあります。基本の目安は「枝全体の1/3程度」を残すことです。強剪定が必要な場合でも、一度に大量に切るのではなく、数回に分けて徐々に整えるほうが木に優しく、健康を保ちながら樹形を整えられます。また、剪定後の切り口は水分が失われやすく、病害虫の侵入経路になりやすいので注意が必要です。
道具を準備する
剪定作業は安全に行うことも大切です。剪定ばさみや太枝用ののこぎりは、よく切れる状態にしておきましょう。切れ味が悪い道具は枝を潰してしまい、癒合が遅れる原因になります。また、作業中の怪我を防ぐために、軍手や保護メガネ、長袖・長ズボンを着用することが推奨されます。
剪定後の切り口には癒合剤を塗布しておくと、病害虫の侵入を防ぎ、切り口の乾燥や腐敗を防ぐことができます。特に雨の多い時期や湿度の高い環境では、癒合剤を塗ることが樹木を守る上で非常に有効です。
さらに、剪定作業を行う際には、周囲の環境も確認しておくと安心です。足元が滑りやすい場所や、剪定した枝が他の植物や建物に当たらないように配慮することで、安全に効率よく作業を進められます。
プロに依頼するのもおすすめ:相場は?
高所作業や大きな木の剪定は危険を伴うため、植木屋や庭師に依頼するのもひとつの手です。樹高や作業内容によりますが、一般的に低木(3m未満)で2,500円〜5,000円、中木(3m〜5m未満)で5,000円〜9,000円、高木(5m以上)で13,000円〜20,000円程度が目安です。7m以上などの高木や、特殊な剪定が必要な場合は、重機の手配などで追加料金が発生することもあります。
これらはあくまでも目安ですから、複数の業者から見積もりを取ってよく検討してみましょう。剪定料金だけでなく、作業内容、追加料金の有無、ゴミの処分方法などを事前にしっかり確認することをおすすめします。

梅を剪定しないとどうなるの?
梅の剪定を怠ると、見た目・生長・病害虫の面でさまざまな問題が生じます。剪定は単に見た目を整えるだけでなく、木の健康維持や果実・花の質を保つためにも重要です。ここでは、剪定をしなかった場合に起こる影響を詳しく見ていきましょう。
見た目が悪くなる
剪定を行わないと、枝が無秩序に伸び、樹形が崩れてしまいます。特に枝が混み合ってくると、他の植物に覆いかぶさったり、地面に垂れ下がった枝が歩行の邪魔になったりすることもあります。枝が乱れることで、庭全体の景観が損なわれ、せっかくの花梅であっても花の見栄えが悪くなります。
また、しだれ梅のように枝が自然に垂れ下がる種類は、剪定を怠ると下枝が地面に触れ、汚れや虫の付着が増えるリスクや、樹全体が不格好に見えることがあります。庭園や家庭の景観を保つためにも、定期的な剪定は欠かせません。
生長を阻害してしまう
枝が込み入ることで、樹全体に十分な日光が届かなくなります。光合成が不十分になると、枝や葉の成長が停滞し、花芽や果実の発育にも影響を及ぼします。花梅では花の数が減り、花付きが不均一になることがあり、実梅では果実が小さくなったり、収穫量が大幅に減少したりすることもあります。
さらに、枝が伸び放題になると樹の内部が暗くなり、新しい枝の発育が阻害されます。若い枝が育たないことで、樹全体の樹勢が衰え、長期的には木の寿命にも影響を与えかねません。
病気になってしまう
枝が混み合った状態では、風通しが悪くなり湿気がこもりやすくなります。湿った環境は、カビやうどんこ病、黒斑病などの病害が発生しやすい条件です。また、害虫の侵入も増えやすく、特に若い果実や葉に被害が出やすくなります。剪定によって枝間の空間を確保すると、日光と風が行き渡り、病害虫の発生を抑えることができます。
古くから言われる「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という言葉には、桜は強く切ると樹勢を傷めるが、梅は剪定をしないと樹勢が衰えるという意味があります。つまり、梅は適切に剪定しないと樹勢が弱まり、病害や老化が進む傾向にあるのです。
剪定を怠ることで、樹形の乱れだけでなく、花や果実の質の低下、さらには病害虫の被害増加といった複合的な問題が生じます。そのため、梅の木を健康に保ち、花や実を楽しむためには、定期的で計画的な剪定が不可欠です。

【梅の木は魅力的】正しく剪定して、梅の花も実も楽しもう!
梅の剪定は、ちょっとした手間に思えますが、実際にやってみると案外楽しいものです。枝をすっきり整えて風通しを良くしてあげると、来年の花や実も元気いっぱいに育ってくれます。剪定ばさみを手にして「どの枝を残そうか、どこを切ろうか」と考えながらチョキチョキ作業する時間は、まるで木と会話しているような感覚にもなります。道具や安全対策を整えて、無理のない範囲で作業すれば、梅の木もあなたも心地よい時間を過ごせるはずです。
春には可憐な花を、夏には甘酸っぱい実を楽しみながら、庭仕事を満喫してみましょう。



