梅の産地と品種はこんなにあった!梅の花も実も「旬」を楽しみ尽くそう
春に花を愛で、初夏に実を味わう——。日本の四季とともにある梅には、古くから人々を惹きつける力があります。
ところで、あなたは梅の歴史や品種(産地)をどのぐらいご存じですか?
日本各地には「南高梅」や「白加賀」など、地域ごとに個性豊かな梅の品種がたくさんあります。また、春には可憐な花を咲かせ、初夏には果実が旬を迎える梅は、観賞用としても、梅干しや梅酒づくりの素材としても、日本の四季を感じさせてくれる魅力あふれる存在です。
この記事では、主な梅の歴史と代表的な品種(産地)、梅の「花」と「実」、それぞれの旬の楽しみ方をご案内します♪
梅の歴史と梅の主な産地とは?
梅はバラ科サクラ属の落葉小高木(らくようしょうこうぼく:人間の背丈よりも高く、ある程度の高さまで成長する木を指す)で、日本では古くから親しまれてきた果樹のひとつでもあります。
その起源は中国にあり、紀元前から薬用や観賞用として利用されていたとされています。日本には弥生時代またはそれ以前に伝わったと考えられ、奈良時代には既に宮廷や寺院で観賞用として栽培されていた記録が残っています。特に『万葉集』には梅を詠んだ歌が多く登場し、当時の人々が梅に対して特別な思いを抱いていたことが伺えます。平安時代以降、桜が花見の主役となる中においても、梅はその香りや品のある佇まいで愛され続け、江戸時代には実を漬けて「梅干し」や「梅酢」として利用する文化が庶民にも広がりました。
現在、梅は日本各地で栽培されていますが、地域ごとに特有の品種があり、それぞれの特徴を生かした用途があります。以下に、梅の主要な産地と代表的な品種について紹介していきます。
【和歌山県:南高梅(なんこううめ)】
和歌山県は日本一の梅の生産地で、国内収穫量の約6〜7割を占めます。その代表的な品種が「南高梅」です。南高梅は高品質で加工適性が高いため全国的にも広く流通しており、皆さんにも馴染みある品種ではないでしょうか。この品種は果実が非常に大きく、果肉が厚くて柔らかいのが特徴で、梅干しや梅酒に最適とされています。
また、南高梅の名前の由来には、地元の農業高校が大きく関わっています。
昭和20年代、みなべ町の在来種「高田梅」の中から、特に品質の良い木を選抜しようという取り組みが始まりました。この選定・育成に協力したのが、和歌山県立南部高校の園芸科の生徒たちでした。5年間にわたる調査・選別の末、優良系統が見つかり、昭和30年(1955年)にその品種が「南高梅」と命名されます。これは「南部高校」の功績をたたえて、「南高(なんこう)」の名を冠したことによるものです。
【群馬県:白加賀(しらかが)】
関東地方を中心に栽培されている「白加賀」は、群馬県を代表する品種です。果実は中〜大粒で、皮が厚めでしっかりしており、加工しても型崩れしにくいという特徴があります。そのため、梅干しや梅酒のほか、梅シロップなどにも適しています。やや渋味はありますが、熟すと香りが良く、加工後はまろやかな風味になりますよ。
【山梨県:甲州小梅(こうしゅうこうめ)】
山梨県で多く栽培されている「甲州小梅」は、小粒で種が小さく、果肉が緻密なのが特徴です。塩漬けやしそ漬けにして「小梅干し」として利用されることが多く、お弁当やおにぎりにぴったりなサイズ感で人気です。鮮やかな紅色に染まりやすく、見た目にも美しいのが魅力的!風味はしっかりとした酸味があり、古くから保存食として重宝されてきた歴史があります。
【徳島県:鶯宿梅(おうしゅくばい)】
「鶯宿梅」は徳島県をはじめ西日本で多く栽培されている中粒〜大粒の品種です。元々は中国から渡来したとされ、花の美しさから観賞用として栽培されてきましたが、果実も梅干しやジャム、梅酒などに広く利用されています。果皮はやや硬めで、強めの酸味と独特の香りを持ちます。
品種名である「鶯宿梅」は、平安時代の歴史物語(大鏡)に由来しています。
村上天皇の時代、清涼殿前の梅の木が枯れ、新しい木を探すよう命じられた蔵人が、都じゅうを探し回った末、西の京で見事な梅を見つけました。木を掘り取る際、家の主が何かを木に結びつけ「これも一緒に」と和歌(短冊)を差し出します。
「勅なれば いともかしこし うぐひすの 宿はと問はば いかが答へむ(天皇のご命令とはいえ、鶯が宿を失ったと問うたら何と答えればよいでしょう)」
天皇はこの歌に感銘を受け、調べさせたところ、その家は紀貫之の娘・紀内侍のものであると判明し、その才を称えると同時に恐縮したと伝えられています。この逸話にちなんで「鶯宿梅」と名付けられたとされています。
【長野県:竜峡小梅(りゅうきょうこうめ)】
長野県の特産品である「竜峡小梅」は、小粒で皮が薄く、果肉が柔らかいのが特徴です。元は「甲州小梅」から選抜された改良種で、より品質の安定した品種として知られています。酸味と塩味のバランスが良く、調味梅干しやお茶請けなどに適しています。見た目が美しく、贈答用としても人気が高い品種です。
このように、梅は日本の四季や食文化と深く結びつき、地域の風土に合わせてさまざまな品種が育てられてきました。和歌山の南高梅のように大粒で加工向きなものから、山梨や長野のような小梅系まで、各品種には独自の風味や使い道があります。こうした多様な梅の魅力は、今なお日本人の食卓や生活の中に息づいています。

「梅の花を楽しもう」梅の名所と花の見頃はいつがベスト?
南北に長い日本列島では、早いところでは2月上旬から遅ければ5月まで梅の花を楽しむことができます。ただ、一括りに梅の花と言っても、いわゆる梅の原種の特徴を持つ「野梅系」、枝の髄が赤い「緋梅系」、梅と杏子(あんず)両者の特徴が見られる「豊後系」が存在します。また、花弁の数が5枚の一重咲き、花弁が複数枚重なり花の中心が見えない八重咲き、枝が垂れ下がるように伸びるしだれ梅などの花姿の違いや、白・淡紅・濃紅・絞りといった花の色の違いもあり、梅の花は観察すればするほど奥深く、興味をそそられること間違いありません。
どちらかといえば、ピンクのボリューム感を楽しむ桜の花見と違って、梅の花見は枝に吸い付く花弁(はなびら)一つひとつを愛でる楽しみがあるといえるでしょう。
以下に各地の代表的な名所をご紹介しますので、皆さんも春になったらちょっと足を伸ばして梅の花見に出かけてみませんか?
地域 |
梅の見頃 |
代表的名所 |
北海道 |
5月上旬~中旬 |
平岡公園 |
東北 |
3月中旬~4月上旬 |
盛岡、福島、仙台など |
関東 |
2月上旬~3月中旬 |
偕楽園、越生梅林、秋間梅林 |
中部 |
2月下旬~3月下旬 |
熱海梅園、修善寺、知多・佐布里 |
近畿 |
2月中旬~3月中旬 |
南部梅林、月ヶ瀬、大阪城公園 |
中国 |
2月中旬~3月中旬 |
防府天満宮、縮景園 |
四国 |
2月上旬~3月上旬 |
南楽園、白鳥神社 |
九州 |
2月上旬~中旬 |
太宰府天満宮、八代城跡 |
梅の名所【関東地方】
偕楽園(茨城県水戸市)
金沢の兼六園、岡山の後楽園とともに、日本三名園のひとつに数えられる偕楽園は、梅林としても全国屈指。広大な園内には約100品種3,000本の多様な梅が植えられており、特に早咲き・中咲き・遅咲きの品種がバランスよく存在するため、長い期間にわたって梅の花々を楽しめるのが特徴です。
偕楽園は水戸藩第9代藩主・徳川斉昭によって、「民と偕(とも)に楽しむ」という理念のもとに造園されました。そのため、梅の花を観賞するだけでなく、歴史ある建造物や日本庭園の美しさ、自然との調和を楽しめる設計になっています。
例年2月から3月に行われる「水戸の梅まつり」では、茶会(野点:のだて)、雅楽演奏、夜間ライトアップなどのイベントも行われ、伝統文化と梅の美しさを一緒に楽しめる場として、全国から多くの観光客が訪れます。
越生梅林(埼玉県越生町)
偕楽園と並び「関東三大梅林」の一つとされる越生(おごせ)梅林は、室町時代から続く梅の名所。関東で最も古い梅林とも言われ、素朴で歴史ある風情が魅力です。樹齢約670年を超える古木「魁雪(かいせつ)」をはじめ、白加賀・八重寒紅・越生べに梅など、約1,000本・33品種の梅の木が植えられています。さらに梅林周辺を含めると、開花の時期にはおよそ20,000本もの梅が一斉に咲き誇り、辺り一帯を華やかに彩ります。
越生の梅の歴史は古く、1350年頃に九州の太宰府から小杉天満宮(現在の梅園神社)を分祀した際、学問の神・菅原道真公にちなみ、梅の木が植えられたのが始まりと伝えられています。
開花時期は2月から3月で、品種によって開花時期が少しずつ異なるため、約1か月ほど梅の花が楽しめるのが特徴です。
梅の名所【近畿地方】
南部梅林(和歌山県みなべ町)
南部梅林は、和歌山県みなべ町にある日本最大級の梅林で、「一目百万、香り十里」とも称される壮大な梅の名所です。おおよそ100haもの広大な山の斜面に、約10万本の梅の木が咲き誇る景色はまさに圧巻!見頃は2月中旬から3月上旬にかけてとなり、山全体が白や淡紅色に染まり、梅の香りが一帯に広がります。散策路も整備されており、梅の香りに包まれながら、ゆっくりと春の訪れを感じることができます。場所によっては、梅の花越しに太平洋を望む絶景も。
また、この地域は誰もが一度は聞いたことのある梅の品種「南高梅」の本場としても知られています。南高梅の実は大きく果肉が柔らかいのが特徴で、その品質の高さから梅干しや梅酒などの特産品は全国にファンがいるほど。
観梅シーズンには「南部梅林まつり」が開催され、地元の物産販売やイベントで賑わいます。
月ヶ瀬梅林(奈良県奈良市)
月ヶ瀬梅林(つきがせばいりん)は、関西屈指の梅の名所として国の名勝にも指定されています。約1万3,000本の梅が山の斜面や川沿いを埋め尽くすように咲き、2月中旬から3月中旬にかけて、渓谷全体が白や紅の花に包まれるような絶景が広がります。
月ヶ瀬の梅の歴史は古く、江戸時代から名所として知られており、多くの文人墨客が訪れ、詩歌や絵画の題材にもなってきました。また、この地域はお茶の産地でもあり、梅の花とともに「大和茶」の文化にも触れられるのが特徴です。
「梅の実を楽しもう」熟度で異なる収穫のタイミング
ここで改めて梅の実について学んでいきましょう!
梅の実は、収穫のタイミングによって風味や使い方が大きく変わる果実です。収穫の時期は初夏、5月下旬から6月中旬にかけてが一般的で、この短い時期に梅仕事を行う「季節の風物詩」としても親しまれています。梅の熟度によって香り・酸味・硬さなどが異なり、それぞれに適した用途があります。梅の魅力を最大限に引き出すためには、「目的に合った熟度の梅を選ぶこと」がとても大切です。
青く硬い梅 〜シャープな酸味と爽やかさ〜
青梅(あおうめ)は、収穫初期に採れる熟していない状態の梅で、果皮は鮮やかな青緑色をしており、手に取るとしっかりとした硬さがあります。この段階の梅は、酸味が非常に強く、爽やかな香りが特徴です。
この青く硬い梅は、主に梅酒や梅シロップ作りに向いています。アルコールや砂糖に漬け込むことで、時間をかけてまろやかな風味と深い香りを引き出せます。また、果実が崩れにくく、漬け込んだ際にエキスがよく出るのも青梅の魅力です。
選ぶ際は、表面に傷や黒ずみのないもの、ツヤがあり張りのあるものを選びましょう。梅の香りが弱く、やや青臭いくらいがちょうど良い状態です。
黄色く熟した梅 〜芳醇な香りとやさしい酸味〜
時間が経つにつれて、梅の実は徐々に黄色く色づき、果肉も柔らかくなります。この熟した梅は「完熟梅(かんじゅくうめ)」と呼ばれ、甘く華やかな香りが強くなり、酸味もまろやかになります。収穫時期としては、青梅より2-3週間後が目安です。
完熟梅は、主に梅干し作りに最適です。やわらかくて果肉が多いため、塩漬けにするとしっとりとした梅干しに仕上がります。梅の香りも強く、漬けた後に独特の風味が楽しめるのが特徴です。また、ジャムや梅味噌など加熱調理にも適しています。
選ぶポイントは、全体的に黄色く色づき、果皮にほんのり赤みが差すもの。甘い香りが強く、触ったときにやや弾力を感じるものが良品です。ただし、完熟梅は傷みやすいため、購入後はすぐに使うようにしましょう。
梅干し・梅酒作りに最適な時期は?
梅の収穫は例年、地域や気候によって若干異なりますが、5月下旬〜6月中旬が最盛期です。梅酒やシロップを作るなら5月下旬〜6月上旬の青梅がベストで、一方、梅干しを作るなら6月中旬前後の完熟梅を狙うのが適しています。
毎年この時期にはスーパーや直売所で新鮮な梅が並ぶため、「今しか手に入らない旬の食材」として、多くの家庭で梅仕事が始まります。梅は収穫後も追熟するため、青梅を数日置いて黄色くさせることで、酸味を抑えた加工も可能です。作るものや好みに合わせて、収穫後の熟成具合も調整できるのが梅の面白さでしょう。
梅といえば最高級品種「紀州南高梅」をどうぞ
このように梅の実は、その熟度によって全く異なる味わいや使い方ができる、非常に奥深い果実です。旬の短い梅の季節を逃さず、ぜひ自分好みの梅仕事を楽しんでみてはいかがでしょうか。季節を感じ、手間をかけて作る梅の味わいは、格別なものとなるはずです!
って、わかってはいるんだけど……
旬のタイミングを逃しがちな方や
大荷物を避けるあまり手が伸びない方に
朗報です!!!!
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